MILANO

忘れていたいいもの

バカンス真っ盛りの8月から9月にかけて
イタリア国内では新規陽性者の数がグッと増えた。
現在は1日3000人ぐらい。少し落ち着いたとはいえ油断はできない

ワクチンの方は、ここにきて一気に進んでいる。というのも
政府がすべての労働者に対して
ワクチン接種をしてグリーンパスを取得する、
もしくはウイルス検査で陰性を証明することを義務づけたから。
すでにレストラン、ミュージアム、展示会イベントホールなどでは
上記のいずれかを提示できなければ、中へ入ることができない

夏以降、ヨーロッパからの観光客も戻りつつある。
9月前半は靴&バッグの展示会につづきミラノ・サローネが。
さらに後半はミラノコレクションでリアルショーも数多く開催された

わたし自身は、といえば
「日常を淡々と生きたい」と、楽観的に考えている。
が、このたんたんが難しい

好きすきニット。
それから ’ホット’ がつくものを
意識しないでやったり、身につけたり、食べたりしている。たとえば
ホットピンクのニットを衝動買いした老舗セレクトショップビッフィのショーウィンドウで一目惚れ。
コムデギャルソンガールのホットピンクのニットガーリーなムードに
足もとはブリティッシュちなみにビッフィのショッピング袋はパーリーな鶯色。
こんな色のチョイスに♡ときめくこの10年くらい
「着てみたい、でもやっぱり…」を繰り返していたチュールスカート。
どうせ買うならば、ファビアナ フィリッピと決めていた

3枚重ね、ストライプのモヘア刺繍がスポーティな表情。
グレーはピンクともホットな関係!?秋の装いに、元気のでるホットピンク。
これからも積極的に取り入れていきたい

ホットコーヒー、ホットサンド、ホットドッグ、ホットケーキ…
食べ物だって、懐かしい庶民の味でほっとしたいあたたかい一皿は、もうそれだけで心も身体も
ほっとするもの

マニアックなほどのニットへのこだわり。「ほっとけない」。これがわたしの基本だから
気になるもの、興味があることにきちんと向き合い、
ムリでもなんでもとにかくやってみる。
ミラノコレクション期間中にアポを取って訪ねたのは…ポルタジェノヴァ駅の裏手、フツウの住宅街の中庭の奥。
こじんまりとしたロフト空間で展示会をしていたニットブランドBoboutic

素材の入手から製造までイタリアメイドにこだわり、
丁寧なものづくりをしている彼らの2021年SSコレクションは
Lino(麻)を軸に、カシミヤやシルクを混合した素材で
Tシャツ、ジャケット、さらっと羽織れるコート、ロングスカートやパンツコットンガーゼのキルティングジャケット、ワンピースなど。
カラーはオフホワイト~ベージュ、グレーを中心に差し色でグリーンを

いくつか実際に着てみると「なるほど」と思うことも。たとえば
ジャケット&コートはちょうどよい位置にポケットがついていたり、
Tシャツなどはわざと内側ポケットがついていたり

着たときの襟の形やボリューム感はすごくモダン。
コートのボタンは内側でとめる(それがデザインのような)デザインに。
袖やバックはゆったりとしたシルエット

スタイルのある20代後半~80代まで、着る人の立ち振る舞いを引き立て、
微妙なアクセントを加えながら、人それぞれの個性を輝かせてくれそう

ほっと一息。
カレンダーが10月になったら、
ほっと一息つきたくなった夫のマルコ、愛犬ノリと、
ミラノから車で2時間半かけて
ピエモンテ州南部にあるクーネオへ
ゆったりとした
気分で歩けるポルティコ(屋根つきの歩行者通路)のある
旧市街の大通り

中には14世紀に建てられた館も
ひょっこり顔を出すはじめて訪ねる街を
知るきっかけはどこにでも

一杯のコーヒーだったり、
人の話し声だったり、こんな
街中の小さなアートだったり

老舗の帽子店

「昔は38店舗ぐらいあったけど、いまは数えるほどしかないのよ」
と、淋しそうにマダムが教えてくれた

さすがは栗で有名な街。
国際マロン見本市がもうすぐ開催されるイタリアにはMarrone(マローネ)、Castagna(カスターニャ)
という2種類の栗がある。マロングラッセはマローネの方「なにこれ」。カフェ・アリオーネで
見た瞬間テンションが上がったお菓子包み方も、リボンとかを使わないのも◎
1923年創業Arione口の中でふわっと溶けてしまうくらい繊細なメレンゲに
生クリーム&マロングラッセをサンドイッチ。
ひさしぶりにかなり感動した店の看板商品(商標特許あり)はラム酒風味のダークチョコ。
こちらは夫のマルコの大好物に

airbnbで探した宿泊先はDroneroという
中世の面影が残る街部屋の窓からの
眺めがこちら↓日が暮れるまで、テラスで飽きもせず
ただ、ぼーーーっとしていた地元のビールで乾杯♩
ANIMA

ここは1500~2000メートル級の山に囲まれているから
少し車を走らせれば、あっという間に頂上付近までたどり着く

ピエモンテ州の牛乳の約50%はクーネオで生産。
そのほとんどはチーズに加工されているイタリアでも希少価値の高い山チーズのひとつ、
カステルマーニョはこのあたり一帯で作られているぽろっと崩れていくテクスチャー、独特な酸味とほどよい塩味。
テーブルチーズとして赤ワイン&グリッシーニと、
ニョッキのソースやリゾットにもあう

犬の散歩中、たまたま見つけた菓子店で
さらにまた驚きがメレンゲにヘーゼルナッツ入りチョコクリームを
サンドしたビスケット。
たちまちトリコにし、のちのちまで甘い余韻を残す。
このドルチェを発明したクネーゼ人、おそるべし

最終日はブラへ寄り道。スローフード(その土地の伝統的な食材や食文化を見直す運動として
1980年代に生まれた社会運動)の発祥地に着くやいなや精肉店へ細くて長い生ソーセージ(ブラのスローフード認定)を買い求め、
歩きがてらポテトチップスを食べるように
ソーセージをパクっ。うまい!ランチは、スローフード協会本部の隣にある
オステリア・デル・ボッコンディヴィーノピエモンテ州の郷土料理、
「ヴィテッロ・トンナート」卵黄40個とメニューに書かれている
手打ちパスタの「タヤリン」赤or白ソースを選べるけれど
パスタ本来の食感や味を楽しむなら白で小ちゃな肉詰めパスタ「アニョロッティ・デル・プリン」。
ソースはバターとセージ(葉を細かく切るのがポイント)でシンプルに

まわりをぐるっと見わたせば、私たちのようなツーリストだけでなく
現地の人たちもちゃんと食べに来ている。
お昼からグラスワインを飲んで、地元料理を美味しそうに食べ、
わいわいと楽しそうにおしゃべりしている

スローフード誕生から30年以上が経つ。
淡々とつづけてきたからこその今がある。
この旅で、ほっとすることがたびたび、
忘れていたいいものを見せてもらった気がする