発想がとても自由でユニークなミュージアムを見つけた!
Museo della Merda http://www.museodellamerda.org/about/
ミラノから南へ、車で1時間ほど走ればのどかな牧草の広がる風景が見えてくる
2500頭の牛を飼育する大きな農場に到着。ここではグラナ・パダーノチーズの原料となる牛乳を毎日300キンタル(1キンタルは100キログラム)生産する。そして牛が排泄するフンは、なんと1000キンタルにもおよぶ
「この現実を前向きに解決できないものか……」と、考えたヒトがいる
農場の現オーナーであるロカテッリ氏は、ユーモアのセンスとインテリジェンスにあふれたイタリア紳士
大量のフンからメタンガスを抽出して農場の肥料、そしてレンガや漆喰のベースとなる材料を独自で作り出している
未来を先取りする大胆な発想と行動力、画期的なシステムで大気汚染を減らし大地を守る
農場と飼育に対してのリスペクトはもちろんのこと、牛の排出したフンに新たな価値を与えている
オーナーはアートに造詣が深い
このミュージアムは農場とその周辺をガイドといっしょに散歩するところからはじまる
アーティストのDavid Tremlett、Anne & patrick Poirierが手がけた農場周辺のオープンエア・アート
ビジュアル言語、色の配置、ジオメトリック……アーティストたちは朝から日が暮れるまで、おのおのが農場を見て、歩き、感じたことを表現した作品
広大な敷地内にある中世の城を屋内ミュージアムに
フンをテーマに学術的リサーチ、自然、アート、テクノロジー……さまざまな角度からアプローチ
エントランスにさりげなく展示されていた作品。じつは貴重なエトルリア時代のもの
牛の排泄したフンから独自で開発したレンガ
大小さまざまな植木鉢もオリジナル商品
城内のトイレがあった場所で発見されたフン
ルイス・ブニュエル監督〈自由の幻想〉1974年を上演
非日常的な世界を描くこの作品は、ダイニングルームでゲストがみな椅子ではなく便器に座るシーンが印象的
農場で使う肥料を混ぜた土で育つ植物
化石になった大昔の恐竜のフン
古代エジプトでは、再生と復活の象徴で聖なる甲虫として崇拝されたスカラベ
スカラベは哺乳動物のフンを丸めて足で転がしながら運び、土の中に埋めてから食べる
スカラベ・モチーフのコレクション
ふたつのアート作品がにらめっこ
スツールは、〈芸術家の糞〉を1961年当時に発表したイタリアの芸術家ピエロ・マンゾーニへのオーマジュ Piero Manzoni http://www.pieromanzoni.org/opere_merda.htm
天井まで高く積まれたマルシェ木箱。この城周辺の畑で取れた野菜や果実を運ぶときに実際に使用されたもの
歴史や文化を物語る木箱は城内にそのままストックされていた。それを見た美術館キュレーターが「それ自体が十分に美しい!」と、感激しインスタレーションすることに
ここを訪ねる人たちは、2500頭の牛も作業スタッフも快適に過ごせる環境、現代的に整備された施設、人々の感覚を揺さぶるアート……それらすべてを目の当たりにして、素直に感動できる!
時間が持つ豊かさ、農場の大きな可能性、過去、現在、未来……思考はどんどん広がる。”自分の頭で考える”、”自分の感覚を信じる”というシンプルなことを、忙しさにまぎれて忘れかけていた……反省、反省……